家で過ごす時間が増えるほど、
「自分の部屋、なんだか落ち着かないな…」
そんな違和感に気づく方が増えています。
私はフリーランスのインテリアコーディネーターとして、
多くの住まいを見てきましたが、
居心地のいい部屋には必ず“共通点”があります。
そしてその共通点は、センスや予算よりも、
実は “人間の脳の仕組み” に深く関係しているんです。
目次
空間デザイン心理学®から見る「落ち着ける部屋」の条件
空間デザイン心理学®では、
私たちの脳は次の3つの層でできていると考えられています。
脳幹(生きるための脳)…安全が確保されると働く
大脳辺縁系(感じる脳)…仲間や心地よさを感じる
大脳皮質(考える脳)…集中・創造する
安全や安心という土台が満たされることで、集中や創造といった高度な脳の働きが促されやすくなります。
本能的な安心感が欠けていると、感情や理性的な思考へのエネルギーが奪われてしまうからです。
つまり、安心できる環境が整っているほど、私たちは心地よさを感じ、深く集中できる状態へとスムーズに移行できます。
多くの人は“おしゃれさ”を優先しがちですが、
本当に大事なのは、
「人間が本能的に安心できる環境になっているか?」
ということなんです。
参考資料:MacLean, P. D. (1990). The Triune Brain in Evolution: Role in Paleocerebral Functions. Plenum Press.
私自身も悩んだ。「家なのに落ち着かない部屋」だった頃
実は私自身、会社員の頃は
自宅のデスクを使うことはほとんどありませんでした。
理由はいくつかありますが、よく考えると
”レイアウトが“入口に背を向けた配置”もその一因だったかもと振り返っています。
なにか後ろで家電や外の音がするだけで気になり、
集中しようとしてもソワソワしてしまう。
結局、家で仕事をすることはほとんどありませんでした。
当時は「なんで落ち着かないんだろう?」と
理由が分からず、家具を買い替えても改善せず…。
人は入り口が見えない状態では、本能的に警戒が解けない。だから、も心が落ち着くわけがなかったんです。
ものを減らすだけでは「居心地」は生まれない
ミニマリスト的に“物を減らせばすっきりする”と
考える人も多いですが、
それは 一部だけ合っていて、一部は間違い です。
✔ ものが多すぎると注意が散る
✔ でも、ただ空っぽにするだけでは「安心」にはつながらない
大事なのは、
“安心できる場所”になるよう、役割を持ったものがあること。
たとえば、手に届く位置に必要なものがあることや、
自分の好きなテクスチャーが視界に入ること、
落ち着く色味が多いこと。
「好き」と「安心」のバランスがとれたとき、
はじめてその部屋は“味方”になってくれます。
今日からできる「安心できる部屋」のつくり方
ここでは、クライアント様にもよくお伝えする
“今すぐできる小さな工夫”をご紹介します。
① 入口に背を向けない配置にする

これだけでも、
脳の警戒モードがかなり下がります。
特に、集中して作業をするワークデスクはできる範囲で入口に対して視界が開けるようにするのが理想です。
② ひとつでいいから“好きなもの”を置く

大きなものでなくて大丈夫。
お気に入りのマグ、布、照明、小物。
「これがあるだけで気持ちが落ち着く」
そんなひとつがあると、
部屋の“軸”ができます。
③ 動線上のストレスをひとつ消す
扉を開けにくい、コードが邪魔、片付けにくい…。
毎日の小さなストレスは、積み重なると大きな負荷になります。
たとえばコードをまとめるだけでも、
脳の情報処理はぐっと軽くなります。
あなたの部屋は、これから“味方”になる
私はずっと、
「空間は人の心に影響する」と信じてきました。
そして多くの方の部屋を整えてきた今、
その確信はより強くなっています。
居心地のいい部屋は、
おしゃれでも高級でもなくてよくて、
必要なのはただ、
あなたが無意識に安心できる環境であること。
小さな工夫からで構いません。
あなたの部屋は、
今日から少しずつ“味方”になっていきます。